三菱UFJ銀行 API事務局です。
今回は、自社サービスに当行APIを取り入れている企業様のインタビューをお届けします。
本日ご紹介するインタビュー企業様は、会計・人事労務のクラウドサービスを幅広く展開しているfreee株式会社様です。当行APIを実際に活かしたサービスについて、開発担当者やマネジメントに関わる方々に開発時のエピソードなども踏まえてお話いただきましたので、API活用のイメージがより膨らむと思います。
利用事業所100万超えの会計・人事労務のクラウドサービスを提供
― まずは提供されているサービスやターゲットとしているユーザについて教えてください
個人事業主から中堅企業、上場企業まで、幅広いユーザを対象に会計・人事労務のクラウドサービスを提供しています。クラウド会計ソフト「freee」ができて5年経ち、利用いただいているユーザは100万事業所を超えました。
― 当行APIを使用するきっかけについて教えてください
きっかけは、 MUFG Fintech Challenge 2015です。現在当社で提供しているようなサービスとして、インターネットバンキングから入出金明細をAPIで取得し、ユーザ自ら送金したい明細を、当社のデータ連携により銀行へ振込処理ができるサービス案を企画し応募しました。会計・経理業務と決済部分が繋がることはユーザの利便性に繋がると確信し、このような案を出しました。結果、当社はこの案で大賞を受賞しました。また、それを実際にMUFGと協働してこのアイデアを実現することができました。
― 様々なサービスをご展開されている中で、当行APIをどのような場面で利用しているか教えてください
会計freeeというサービスで、照会系や更新系のサービスを提供しています。その中の明細取得や振込申請において、APIを利用することで、ユーザが三菱UFJ銀行の口座・明細を選ぶことができるようにしています。
APIを使用する前、明細を取得するとなると、スクレイピングによりHTMLにアクセスして、そのHTMLから明細の必要箇所を少しずつ取得していました。そのため、HTMLに変更が加わると、その処理自体も修正しなければならず、ユーザが安定的にお金の動きを取り込めないということが起こっていました。しかし、APIを使うようになってからは会計システムが安定して動き、ユーザも安定してお金を取り込めるようになりました。また振込申請APIを使用し、振込期限や振込元の情報を会計システムに入れて、振込めるサービスを提供しています。
― 当行APIを使用してみて、開発する上で使いやすかった点はありましたか
開発者へのサービスとして他行と比べて良かった点は、テストデータの登録を行うツール(※)が充実しており、環境が使いやすかったことです。テストデータを登録する場合は、好きなタイミングで作れたり日付が柔軟に設定できたりしたため、日付が過ぎたため明細が使えなくなることがなく、様々なバリエーションのテストを実施できました。ツールを利用することで簡単な手順で必要な期間の明細が作れたので、テストがとても実施しやすかったです。
また一般的には、テストを実施できる期間が限られているポータルサイトが多い中で、三菱UFJ銀行API開発者ポータルは基本的にほぼ制限なく使用できる点が良かったです。ウォーターフォールではなくアジャイルで開発しているので、開発後、改良の度にテストをすることができました。
※本番接続のお申込みをいただき、お申込み内容を確認後にご利用いただけます。
― 当行APIを使用して開発する上でのエピソードがあれば教えてください
接続トラブルが起こった際、当社と三菱UFJ銀行、どちらに原因があるのか、お互いのシステムを深く調べ合って原因を特定し解決することができました。技術者同士で密に連携をとり、問題を解決できた点がとても良かったです。そのときは三菱UFJ銀行側に原因があったのですが、エンドユーザに迷惑がかからなかったかをとても配慮して対応してくださいました。
金融業界やフィンテック企業の今後を見据えて、大規模なクラウド専業の会社だからこそできることをやっていく
― 今後のビジネス戦略について、サービス展開を踏まえてどのようにお考えでしょうか
個人事業主のみなさんに対し、個人向けAPIを利用したサービスの提供はぜひやっていきたいと考えています。
また、当社でも自社のAPI充実や開発者の支援を重要な戦略に位置付けています。日本の会計サービスとしては初となるAPI公開と freee Developers communityの立ち上げを実施し、多くのエンジニアの皆さまに参加頂いています。特に、数百名規模の企業では各社の業務や課題も様々ですので、APIを活用することで課題に合わせて銀行とfreeeと様々なクラウドサービスとを組み合わせられるようにしています。
― 今後、当行に限らず銀行全体としてAPIに求めることや課題と感じている点があればお聞きしたいです
日本のフィンテック全体として考えると、APIのインターフェースの共通化が必要だと感じます。そのためには、銀行や電代業者など、関係者同士が協力する必要があると考えています。
また、APIは我々のようなサービス開発者(=APIの利用者)にとってのAPIの使いやすさや取得したい情報を得ることが出来るかといった観点だけでなく、実際にサービスを利用するエンドユーザの課題や使い勝手を踏まえて、APIのインターフェースなどを検討する必要があると考えています。
― freee様は電代業者第1号でもありますが、API化に向けてどのような意識をお持ちだったのでしょうか
エンジニアとして、エンドユーザの課題解決の一手段としてAPIを使ってみたいと思っていました。またAPIを導入することで、振込処理が簡単になるなど、ユーザにとっても大きなメリットがあると考えていました。
当社は、利用しているAPIの種類が多く、規模の大きなフィンテック企業として、我々1人1人がこの業界を引っ張っていくという自覚を社長含め強くもっています。小規模のフィンテック企業ですと、電代業者の取得が難しい場合もあるため、当社はフィンテック協会の一員として、業界の発展のために今後セキュリティや法務の方向けに電代業者登録のための勉強会やセミナーの実施も考えています。
全員で考え抜き、新しいアイデアを生み出す
― 5分で会社設立に必要な資料を作成する「会社設立freee」など、思わず目を引くサービスなども展開されていますが、どのようなプロセスでアイデアを生み出しているのでしょうか
社内の役割毎にエンドユーザの課題やサービスの改善点を考える点ももちろんありますが、生み出した案の取捨選択は関係者全員で行います。
プロダクトマネジャーはどういう課題を解決したいか課題を見つけ出し、そのためにどういうものを作るかを明確にして、サービスを検討しています。それに対して、エンジニアも加わってディスカッションや決定したプロダクトの仕様作りを全員で行います。
決められた仕様をエンジニアがただ作るという考えではなく、エンジニアは課題解決のプロフェッショナルであるべきと考えています。
<インタビューを終えて>
今回のインタビューでは、freee様からはモックAPI設計・開発時から当行と検討を進めていらっしゃる事業者ならではのお話をたくさん聞くことができました。
フィンテック企業への支援など、一歩先を行くフィンテック企業としての責任感や役割認識を強く持ってフィンテック業界を牽引されているように感じました。また、エンドユーザであるユーザのことを第一に思うという点において、freee様と当行は同じです。フィンテック企業と銀行それぞれの特性を生かし、どう連携していくのがユーザにとって最良なのか、それぞれがしっかりと向き合うことで、企業間のより良い関係を構築し新しいサービスに発展していくと考えています。今後のAPIを考える上で、エンドユーザの課題解決に向けた情報共有など、更なる連携をしていければと思います。